研究概要 |
[目的] クッシング病下垂体腺腫細胞とラット下垂体ACTH細胞におけるCRF受容体発現調節機序の違いを遺伝子及白レベルで調べ,ACTH分泌異常症及びクッシング病下垂体腺腫の病態生理解明の一助とする。 [方法と結果] 1 ヒトCRFタイプ1受容体遺伝子は12個のエクソンからなることが明かとなったが,現在5'側を含むDNA採取を試みている。 2 CRF-cAMP系は正常ACTH細胞におけるCRF受容体遺伝子発現及び蛋白レベルをdown-regulateし,クッシング病下垂体腺腫細胞におけるそれらをup-regulateさせた。一方糖質コルチコイドやAVPは双方の細胞においてもそれらをdown-regulateさせた。いずれの場合もCRF受容体mRNAレベルの変動が早いため,転写レベルよりもmRNAの安定性への影響と思われた。 3 坑CRF受容のC端抗体を家兎に免役して作成し,CRF受容体のRIAを確立して受容体蛋白の定量化に成功した。この抗体はCRF-R1とR2の双方の受容体に交叉した。正常ACTH細胞でのCRFによるCRF受容体への影響を見てみると,やはり蛋白レベルでもdown-regulationがおこることが証明された。 [考察] 正常ACTH細胞において,CRFはCRF受容体を遺伝子および蛋白レベルの双方でdown-regulateする。このことは視床下部性下垂体機能低下症でCRF試験にACTHが反応することの説明となる。このメカニズムの主な因子はc AMP-CREBの系と考えられる。一方,ACTH細胞が腫瘍化すると,この系を介して逆にup-regulateされ,ネルソン症候群への進展への一つの因子になりうる。今後はCRF受容体遺伝子の転写活性因子及びmRNAの安定化および不安定化のメカニズムについてさらに検討を加えることが必要と思われる。
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