研究概要 |
今年度は補助金の交付が10月であり実験に十分な時間が無く、in situ hybridization及び免疫染色を用いてストレス後に増加する室傍核のfosの発現を抑制する条件の設定を主に行った。室傍核のfosの発現を抑制するため、まず小脳や線状体のfosの発現を抑制することが報告されているNMDA受容体拮抗薬であるMK-801を腹腔内投与したところ、拘束ストレス後の室傍核でのc-fos mRNAの発現は有意に減少した。そこで、ラット定位脳固定装置を用いてMK-801を室傍核に直接微量投与し、fosの発現を観察した。MK-801の室傍核内投与はfosのみならず他の原癌遺伝子であるjun-B,NGFI-Bのストレス後の発現も抑制したが、CRF遺伝子転写活性の指標となるCRF hnRNAの発現増加には影響を与えなかった。従って、ストレス後増加するfos,jun等の原癌遺伝子はCRF遺伝子の転写活性に直接影響を与えることは考えにくく、グルココルチコイドによるCRF遺伝子の抑制にfosが直接関与している可能性も少ないことが示唆された。しかし、MK-801による室傍核のfos発現の抑制は部分的でありfosのストレス後の増加が完全に抑制されなかったことから、次にfosのantisense DNAを室傍核に微量投与し検討を行った。fosのantisense DNAの投与によりストレス後の室傍核のfosの発現量は減少或いは消失した部分も認められたが、一部分ではあるがかえってfosの発現が増加した部位も室傍核内にあり、antisense DNAの投与量、投与時間など今後検討すべき課題が残された。
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