バセドウ病眼症におけるHSP70遺伝子の異常発現機構を検討するためバセドウ病眼症の手術時に得られた組織より線維芽細胞の培養を行った。まず、正常ヒト線維芽細胞との比較において患部より採取した線維芽細胞は42度1時間という弱いHeat shockに対してのHSP70 mRNAの増加率が大きいことが判明した。このようなHSP70の過剰発現の機構を解明するため非刺激時の転写レベルをrun on assayにて検討したが転写の基礎レヴェルは低く両者に特に差は認められなかった。よって、刺激時の反応を規定するHSP70の転写因子であるHeat shock factor-1のmRNAをNorthern blotを用いて検討したが両者差が認められなっかた。よって弱いheat shockに対する病変部線維芽細胞の反応性を規定するものはいわゆる転写促進因子以外の機構によることが示唆された。最近不活化されたHSEにKu-antigenが結合し、negative regulatorとして作用していることが示唆されたため、Ku-antigenのmRNAを測定したところ患部の線維芽細胞で低値を示し、以前の検討でバセドウ病患者においてはKuに対する抗体が高頻度に認められることより、何らかの自己免疫機構によりKu抗原の発現および活性化が抑制されている可能性が示唆された。このことは転写促進因子であるHSF-1の遺伝子発現をAntisense oligonucleotideで抑制しても弱い刺激に対するHSP70遺伝子発現が抑制されなかったことよりも示唆された。
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