研究概要 |
1.PRAD1関連腫瘍の遺伝子診断:塩基配列の相同性を利用してすべてのD型サイクリンの相対的発現を検出するcompetitive RT-PCR法を考案した.RNA0.01μg相当から1回のRT-PCRですべてのD型サイクリンの発現様式をアガロースゲル上で検出でき,これまでのノザン解析の結果とよく一致した.また,全血1μl相当からもシグナルを得ることができた.計69例の細胞株と臨床検体から抽出したRNAを解析すると11;14転座を有する腫瘍細胞(9検体)のみにサイクリンD1の過剰発現パターンが検出された.また,末梢血中に11;14転座型腫瘍細胞が出現している場合でもサイクリンD1の過剰発現を検出でき,少量の末梢血でPRAD1関連腫瘍の診断をすることができる.その他のリンパ系や骨髄球系の細胞株や腫瘍細胞では,D型サイクリンの相対的発現レベルがノザン解析より明瞭であり,系統特異的および分化段階特異的なD型サイクリンの発現様式がより明らかとなった.乳癌の検討は次年度に持ち越された.2.上記RT-PCRで,正常人末梢血にサイクリンD2とD3が同等もしくはD3優位に検出された.血球を分離すると,これらはリンパ球由来のサイクリンD2と顆粒球および血小板由来のサイクリンD3であった.これは,造血の最終段階でD型サイクリンが,細胞周期進行とは異なる何らかの役割を果たしている可能性を示している.3.PRAD1遺伝子の発癌機序の解明:ラット胎児線維芽細胞に活性型rasおよびp53変異体を導入するとフォーカスが形成され腫瘍形成能が獲得される.そこにPRAD1遺伝子を加えると,フォーカス形成能が高まるとともに,ヌードマウスでの腫瘍形成能も同様に亢進してくる.さらに,血清要求度が有意に低下し,PRAD1遺伝子が多段階発癌の一段階を構成しうることが示唆された.
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