研究概要 |
1、222例のB細胞性腫瘍から抽出したDNAを、BCL6遺伝子のMTCプローブを用いたサザンブロットで解析した。その結果、初発病変を解析した197症例中21例(10.7%)、再発病変を解析した25症例中11例(44%)にBCL6の再構成を認めた。BCL6再構成陽性腫瘍は、大細胞を含む非ホジキンリンパ腫であり、治癒可能な生存曲線を示した。 2、BLC6遺伝子を責任遺伝子とする3q27転座は、多様な染色体領域を転座のパートナーとする。t (3 ; 6) (q27 ; p21)は、自験例を含めて4例の報告があることから、recurrentな染色体転座であると考えられる。我々は、BCL6のプローブを用いて2症例のt (3 ; 6)の転座接合部をクローニングし、切断点が互いに極めて近接していることを示した。次いで、6p21.3上の切断点近傍に、新たなH4 histone遺伝子が位置することを見出した。t (3 ; 6)の結果、BCL6の調節領域にH4遺伝子が同じ方向に結合することになる。 H4遺伝子は細胞周期に密接に関連して発現調節を受けていることから、BCL6遺伝子の発現調節の破錠をもたらす新たなメカニズムが明らかにされた。 3、染色体転座の転座接合部を効率よく検出する新しいPCR増幅法(Long distance PCR, LD-PCR)を開発した。B細胞性腫瘍に特異的な染色体転座であるt (14 ; 18), t (8 ; 14), t (3 ; 14), t (3 ; 22) , t (2 ; 3) , t (14 ; 19) , t (9 ; 14)の転座接合部を含む2-30kbのDNA断片の増幅が可能であり、感度は1/10^4である。t (14 ; 18) のLD-PCRによる検出は、従来のサザンブロットに完全にとってかわるものである。t (8 ; 14)のLD-PCRによる検出は、臨床検体や剖検検体に応用し、その有用性を明らかにした。
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