研究概要 |
1)エストロゲンには腎庇護作用が認められたため(Nephron1995,69:159)、卵巣を摘出しこの影響をSHCラット(Nephron1996,72:72)、腎摘SDラット(Nephron1996,73:251)で検討した。卵巣摘出によりエストロゲン、GHともに低下した。腎庇護作用のエストロゲンの低下による腎障害増強作用と、腎障害作用を有するGHの低下による腎障害抑制作用の総和が卵巣摘出の影響としてあらわれた。生後6ヶ月ではエストロゲン低下による腎障害増強作用が(Nephron1996,72:72)、生後12ヶ月ではGHの低下による腎障害抑制作用(Nephron1996,73:251)があらわれた。 2)腎病変の発現における性差を進行性腎障害モデルであるアドリアシン腎症で検討した。腎障害は雌より雄に強く現れ、しかも除睾により腎障害の発現が抑制された。このことは、少なくとも実験腎炎モデルにおいて腎障害の発現に性差が認められることは普遍的な事象である可能性が強いと考えられた(Am J Neph1996,16:540)。さらにこの雄ラットのアドリアシン腎症モデルでも、除睾およびエストロゲン投与により腎障害は抑制された(Nephrology1996,2:45)。 3)雌ラットのアドリアシン腎症モデルで、コントロールラットあるいは摘卵巣ラットにテストステロンを投与しテストステロンの腎障害作用に対する卵巣の抑制効果を検討した。卵巣摘出ラットにおいてはコントロールラットに比し、テストステロンによる腎障害作用は増強して認められ、卵巣は男性ホルモンの腎障害作用に対し抑制的に働いていると考えられた(Kidney and BP Research1997,20:44)。 4)雄SHCラットにエストロゲンを投与すると腎障害が抑制されることは以前に報告した(Nephron1995,69:159)。しかしエストロゲン投与下の腎摘ラットではこの腎障害抑制作用は認められなかった。エストロゲン投与に伴うGH上昇がエストロゲンの腎障害抑制作用を打ち消したと考えられた(Nephron1997.77:445)。さらにエストロゲン投与下のSHCラットにおいて、追加投与テストステロンは腎障害作用を有するのかを検討したところ、エストロゲン下ではその作用が発揮ず、むしろ抑制効果があることが判明した(Kidney and BP research1997,20:51)。テストステロンによるCH抑制が関与していると考えられた。 5)除睾により腎障害が抑制されることをこれまで報告してきたが(Nephron1993.64:429,Lab Inv1993,69:51)、この抑制効果が除睾年齢時期により差が認められるかどうかを検討した。除睾時期が生後六ヶ月を超えるとその抑制効果が認められなくなることが判明した(Nehpron1997,75:342)。
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