研究概要 |
Angiotensin converting enzyme(ACE)遺伝子多型トNIDDMにおける糖尿病性腎症発症の関係を調べた。 DM歴10年以上の143例のNIDDMと健常者100例の日本人を対象としangiotensin converting enzyme(ACE)遺伝子の16イントロンのI/D多型を調べた。NIDDM143例中100例は腎症を伴い、43例は腎症を伴なつていなかつた。I/D多型は末血よりDNAを抽出しRigatらと同じ領域に設定したプライマーを用いPCRにて決定した。 ACE遺伝子II,IDおよびDD型の頻度は健常人では33%,42%および25%であり、腎症のない患者では33%,37%,30%であり、腎症のある患者では16%,59%,25%であつた。腎症のある患者のACE遺伝子I/D型の分布は健常者や腎症のない患者の分布と異なつていた。腎症のある患者では腎症のない患者や健常者に比しII型の頻度が有意に(p<0.05)低かつた。 高血圧(P<0.001)や高血圧の家族歴(P<0.05)は腎症の発症と有意な関係があつたが、これらのパラメーターとACE遺伝子I/D型には有意な関係は見られなかつた。 HbA_<1C>とACE遺伝子型の間には関係が認められなかつた。 統計学的には有意ではなかつたが、腎症のある患者では高TG血症の傾向があり、ACE遺伝子ID型およびDD型ではII型におけるよりTG,TCとも高値の傾向がみられた。腎症のある患者では腎症のない患者に比してApoC-IIIが有意に増加しており、ApoA-Iが有意に低下していた。ACE遺伝子ID型およびDD型ではII型におけるよりApo-Bが有意に(P<0.05)に増加していた。 結論としてNIDDM患者においてII型の患者では腎症発症の危険が少ないことが示された。
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