研究概要 |
慢性糸球体腎炎の進展過程でmetalloproteinase-2(MMP-2)の産生が亢進していることより、細胞外基質の修復分解にMMP-2は大きな役割をはたしているものと考えられる.糸球体メサンギウム細胞(MC)から分泌されたこのpro-MMPがin vivoで作用を発現するには,糸球体局所で活性化される必要がある.今回,pro-MMP-2の活性化に特異的な膜型MMPのヒトMCにおける発現を検討した. 1、TNFで刺激した培養ヒトMCの細胞膜上の膜型MMPを免疫組織学的に検出した.細胞膜には顆粒状に膜型MMPが染色されており、膜型MMPがMC膜上に存在することが確認された. 2、TNFで刺激した培養MCから精製したRNAに対し,GAPDHをコントロールとしてMMP-2,TIMP-2,膜型MMPのRT-PCRを行ない,相対的な遺伝子発現の変動を検討した.MMP-2,TIMP-2と同様に膜型MMP遺伝子の発現は、TNF刺激に対し濃度依存性に増加していた. 3、培養MCから精製した膜成分をPro-MMP-2に添加すると、容量依存性にpro-MMP-2が活性化されることが確認された. 4、ヒト糸球体でのMMP-2と膜型MMPの発現を免疫組織学的にABC法で検討した.ヒト糖尿病性腎症やIgA腎症においても、メサンギウム領域にMMP-2と同時に膜型MMPの発現が見られた。 以上より本年度の研究では、MCが膜型MMP遺伝子を発現して膜型MMP蛋白を分泌し,これが同時にMCより分泌されたpro-MMP-2を活性化する機序が明らかとなった。ヒト糸球体においても膜型MMPが発現されており、急性炎症時のECM破壊や膜性増殖性糸球体腎炎での係蹄壁二重化部位へのメサンギウム細胞の移動などにMMP-2が積極的にかかわっていることが推測される.
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