研究概要 |
ラット妊娠母体への蛋白負荷が胎児発育及びIGF-I, IIに及ぼす影響を検討したところ、高蛋白による影響は飼料の摂取量などの問題ではっきりとした結果を見い出すことはできなかったが、低蛋白においてはIGF-Iレベルは対照群に比して低値となり、反面IGF-IIレベルは対照と差を認めなかった。 ヒトの未熟児における胎内発育と出生後の発育の差について血清IGF-I, IGF-IIの動態の面から明らかにするために,未熟児の臍帯血及び生後の血清IGFレベルを測定し,発育との関連を見た.その結果,臍帯血IGF-IIに比べ未熟児(appropriate for date : AFD)の生後の血清IGF-IIレベルは低値をとるが、この値は在胎週数に依存しており、在胎30週以上で出生した児より在胎30週未満で出生した未熟児のIGF-IIレベルはさらに低かった。一方、在胎週数に比べて体重の少ない胎内発育遅延児(small for date : SFD)は在胎週数30週未満で出生した未熟児のIGF-IIレベルとほぼ同等であった.出生時のIGF-IIレベルはAFD児とSFD児で差は認めなかった。在胎30週未満で出生した未熟児で修正40週の時点で2500g以上の体重であった発育の良好な群は、2500g未満であった発育不良群に比してIGF-IIレベルは高値を示した。体重及び身長と血清IGF-IIレベルは有意な相関を認めたが,体重・身長の増加率と血清IGF-IIレベルとは相関を認めなかった.従って、生後の体格の絶対値に血清IGF-IIが依存していることになる。 以上の点より、IGF-Iが胎内発育にとって栄養を介して重要な役割を果たし、血清IGF-IIは生後の栄養状態を介して成長に関与していることが考えられ、IGFのスイッチ機構に関してはさらなる検討が必要である。
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