研究概要 |
肺胞II型細胞内外での肺サーファクタントの輸送及び代謝機構の解析を行った。 肺胞II型細胞内における肺サーファクタントの輸送機構について,rab蛋白質(低分子量GTP結合蛋白質の一種)cDNAファミリーのクローニングを試みた。平成7年度は,当初,肺胞II型細胞rab蛋白質(smg24)cDNAをプローブに用いてスクリーニングを行ったが,ハイブリダイズの温度設定の簡略化のために,PCR法によるcDNAスクリーニング法に変更した。rab蛋白質に特異的なアミノ酸配列のうち,2カ所のアミノ酸配列をコードするdegenerateプライマーを作成し,smg24cDNAを鋳型にして,PCRによるcDNAスクリーニング法の条件設定を行った。平成8〜9年度は,この設定条件に基づいて,ラット肺cDNAライブラリーのスクリーニングを行った。この間,PCRの反応条件をさらに検討して,smg24のコンセンサス配列をコードする塩基配列をプライマーとして採用することによって,安定したPCR産物を得ることが可能になった。しかし,1次〜3次スクリーニングでは,陽性プレートを同定できるものの,最終的なクローニングの段階で陽性クローンを確認することができず,現在のスクリーニング方法をさらに改良する必要があることが明らかになった。 一方,肺胞II型細胞から分秘された後の肺サーファクタントの輸送代謝機構について,サーファクタント・サブタイプ転換の面から検討を行った。肺胞II型細胞において合成され,肺胞腔に分泌された比重の重いサーファクタントは,表面活性を発現した後に,比重の軽いサーファクタントに転換され,一部は肺胞マクロファージに貪食処理され,また一部は肺胞II型細胞に取り込まれて再利用される。平成8年度は,このサーファクタント・サブタイプ転換を評価するために,in vitro surface area cycling法を確立した。平成9年度には,この手法を用いて,胎便や顆粒球エラスターゼによるサーファクタント・サブタイプの転換促進と,サーファクタント蛋白質の減成を証明した。
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