研究概要 |
膵臓における腫瘍-膵ラ氏島腫瘍12例(インスリノーマ8例、ガストリノーマ、2例、非機能性腫瘍2例)と膵癌12例について検討した。ホルマリン固定パラフィン包埋組織の薄切切片および凍結切片から、腫瘍および正常組織のDNAを抽出した。膵ラ氏島腫瘍ではp53exon5,6,7,8、K-ras exon1,2の領域、膵癌ではp53exon5,6,7,8の領域についてPCR-“Cold-SSCP"法を行った。膵ラ氏島腫瘍では、12例中10例(83%)にp53の遺伝子変異を認め、12例中2例(17%)にK-rasの遺伝子変異を認めた。膵ラ氏島腫瘍における癌関連遺伝子の変異についての報告は少なく、その関連は未だ明らかではない。今回の検討では高頻度にp53遺伝子の変異を認めており、p53遺伝子の膵ラ氏島腫瘍への関与が示唆された。膵癌では12例中9例(75%)にp53の遺伝子変異を認めた。膵癌におけるp53の遺伝子変異はこれまでの報告(50-75%)と同様に比較的高頻度に認めた。 現在までのところ、direct sequence法では、p53遺伝子において膵ラ氏島腫瘍で11個、膵癌で6個のpoint mutationがみられている(double mutationを含む)。それらのG:C→A:T transitionは、それぞれ、6個(55%)、0個(0%)、また、G:C→T:A transversionは、それぞれ、1個(9%)、3個(50%)で2者の間に大きな差がみられている。また、CpG siteの変異は、それぞれ、3個(27%)、0個(0%)であった。膵ラ氏島腫瘍と膵癌とでは、p53の遺伝子変異に根本的な違いがある可能性が示唆された。
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