研究概要 |
drug carrierとして使用しているαーリン酸三カルシウム(α-TCP)細粒は東京医科歯科大学医用器材研究所無機材料部門より提供を受け検討している。(1)α-TCP細粒は粒度分布は50〜150μm程度であり、その50%粒子径は約90μmであるが複数のほぼ球状粒子が部分的に接合している形態を示す粒子も存在した。また粒子のポア径は約1〜3μmで殆どのポアはオープンポアであり薬剤等の含浸には適した構造をもっていた。(2)実験的にはα-TCP細粒:200mgを呑竜ラットに腹腔内投与(i.p.)し、3日,1週間,1か月,3か月,6か月後の腹腔内及び大網の変化を肉眼的,組織学的に検討した。いず゙れの時期においても腹腔内の癒着等の所見は認められず、肉眼的には1週目よりα-TCP細粒は大網,腸間膜に埋没し始め1か月後よりα-TCP細粒の色調が薄くなり6か月後には肉眼的には消失した。組織学的には3日目にはα-TCP細粒は大網内に島状に取り込まれ個々の細粒はリンパ管内に入り停滞いたが、これは生体防御機構や癌細胞の大網への侵入経路と言われている"いわゆる"milky spotに捕捉されたものと考えられる。また炎症細胞浸潤は軽度認めたが1週間を過ぎると消退し始めた。(3)α-TCP細粒:200mgにCarbolpatin(CBDCA):4mgを無菌的に凍結乾燥法にて製作・調整し、このα-TCP-CBDCA:20mg/KgをAH130肝癌細胞移植による担癌ラットの腹腔内に投与し、腹水,血清,大網内濃度を経時的に測定し、free-CBDCAの腹腔内,静脈内投与群と比較検討した。その結果、腹水中CBDCA濃度はα-TCP-CBDCA投与群はfree-CBDCA投与群に比べ、30分以降では有意に高濃度が持続したが静注群は常に低値であった。CBDCAのAUCではα-TCP-CBDCA群:free-CBDCA:i.p.群:free-CBDCA:i.v.群は8:3:1の比であった。α-TCP-CBDCAのi.p.は、投与による腹腔内の障害もなく、またCBDCAを長く腹腔内に留めることが出来た。AH130癌性腹膜炎モデルによるα-TCP-CBDCA腹腔内投与による抗腫瘍効果の比較検討ではα-TCP-CBDCA群はcontrol群,α-TCP群,free-CBDCA(i.p.)群,free-CBDCA(i.v.)群に比べ有意に長い生存日数が得られた。以上、α-TCP-CBDCAの腹腔内投与の検討では、α-TCP細粒のmilky spotへの捕捉、CBDCAの体内動態,治療効果などの結果から、今後癌性腹膜炎の治療と防止の臨床応用にも治療効果が期待できる。
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