研究分担者 |
中森 幹人 和歌山県立医科大学, 医学部・大学院
寺澤 宏 和歌山県立医科大学, 医学部・大学院
西本 憲生 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (70244746)
玉井 美妃子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (40260814)
庄野 嘉治 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60264884)
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研究概要 |
サイトカイン遺伝子導入による癌遺伝子治療の基礎的検討を行うため,転移性悪性黒色腫組織から分離した腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)にインターロイキン-2(IL-2)遺伝子を導入した.3'-非翻訳部分を除去した480bpのIL-2遺伝子を導入に用いることで,TILから高濃度のIL-2を産生させることに成功した.培地からIL-2を完全に除去してもIL-2遺伝子導入TILは自己増殖し,その増殖は抗IL-2抗体または抗Tac抗体で完全に抑制されることから,autocrine loopを介した反応であることを明らかにした.さらに,臨床応用に必要な基礎的実験を継続したものの,IL-2遺伝子の導入は悪性黒色腫症例由来のTILにのみ導入可能であり(導入成功率:3/12例),大腸癌由来のTILでは有意なタンパクの発現を確認できなかった.以上より,TILにサイトカイン遺伝子を導入することはきわめて困難であり,われわれの目的とする消化器癌に対するIL-2遺伝子導入キラーT細胞を用いた癌遺伝子治療は現実的には不可能であると考察した.そこで,腫瘍細胞,リンパ球につづく第3の遺伝子導入の担体として線維芽細胞に着目し,本研究を線維芽細胞を用いた遺伝子治療として発展させた. その結果,(1)レトロウイルスベクターを用いてマウス線維芽細胞(BALBCL7)およびマウス腫瘍細胞(CT26)へIL-2遺伝子を導入したところ,高濃度のIL-2を産生した.(2)IL-2遺伝子導入線維芽細胞は皮下接種局所の腫瘍増殖を抑制した.(3)IL-2遺伝子導入線維芽細胞により抗腫瘍効果を認めたマウスは,高いCTL(細胞傷害性リンパ球)誘導能を有していた.(4)そのeffector cellは,各種抗体による検討から,CD8陽性Tリンパ球が大きく関与し,NK細胞も一部関与していた.(5)進行大腸癌モデルとしてマウスの盲腸に同所移植モデル(orthotopic model)を作成し,IL-2遺伝子導入線維芽細胞の皮下接種による遺伝子治療を行ったところ,腹腔内における大腸癌の局所増殖を抑制した.その際,ヌードマウスではその効果を認めないことから,Tリンパ球の関与が追証された.以上,得られた(1)〜(5)の成績を現在,英文学術誌に投稿中であり,さらにIL-2遺伝子導入線維芽細胞の臨床応用を目的とした安全性の検討を進めている.
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