研究概要 |
1.ヌードラットを用いたヒト乳癌骨転移モデルの樹立と転移形成能:MDA-MB-231乳癌細胞を用い,8週齡ラットの左頚動脈から大動脈内に10^6個の細胞を接種.4週目より隔週にX線撮影を行い最長8週目まで骨転移の形成,進展を評価.この結果,100%(20/20)の骨転移を生じ,1例にのみ肺転移をみとめた.他の培養株であるMCF-7細胞T47D細胞,BT474細胞について検討したが転移を生じなかった.そこで,MCF-7細胞に線維芽細胞増殖因子を導入し転移能を増強したMKL-4細胞を用いたところ20%(1/5)の骨転移が得られ,本モデルの骨転移は乳癌細胞が骨髄内に到達して後の特異的な増殖能が転移形成に関与していることが示唆された.骨基質に豊富なTGF-βの増殖抑制に関与するp53の変異に着目し,MDA-MB-231とMKL-4の転移骨組織を用いてTGF-β,p53の発現を免疫組織学的に検討.MDA-MB-231にP53の発現をみとめたがMKL-4にはみとめず,TGF-βはいずれも発現していなかった.また,MDA-MB-231自然肺転移細胞株を樹立しており骨転移能を検討中である.2.ヒト乳癌剖検材料27例の転移骨における増殖因子/受容体発現:c-met(87%),ER(52%),c-erbB-2(43%)の順に発現していたが,IGF-IIR,FGFR,PDGFの発現はみとめなかった.これらは原発腫瘍組織の発現と同等であった.現在,パラフィンブロックからDNAを抽出しており,遺伝子レベルでの検討を予定している.今後の研究展開は,抗体の種類,組織の固定脱灰操作等染色性に影響を及ぼす因子について検討するため剖検材料の新鮮標本を集積している.また,剖検材料は死後変化,治療効果などが腫瘍組織に影響しており動物モデルによる検討が不可欠と考えられ,異なった転移能を有する細胞株の比較検討を行う.活性型,不活性型TGF-βに対する抗体を用いた免疫組織染色及びin situ hybridizationによるTGF-βmRNAの局在とPCR-SSCPによるp53の変異を検出する予定である.
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