研究概要 |
IL-2,GM-CSF遺伝子,細胞接着分子B7遺伝子をアデノウイルスベクターを用いてマウス結腸癌細胞colon26に導入し,腫瘍ワクチンとしての有用性を検討した。さらに腫瘍細胞をIFN-γで前処理することにより,MHC class I抗原の発現を高め抗腫瘍効果の上昇をねらった。 IL-2またはGM-CSF遺伝子を組み込んだアデノウイルス感染細胞内に,それぞれ蛋白の産生が蛍光抗体法およびウエスタンブロット法により確認された。FACSによる解析により,B7遺伝子導入細胞の表面にB7抗原の発現が確認された。さらにIFN-γ添加培養により,MHC class I抗原の発現が約5倍上昇した。IL-2遺伝子導入細胞の腫瘍増殖性は親細胞と比較して有意に抑制された。さらに放射線処理した遺伝子導入腫瘍細胞を,さまざまな組み合わせで親細胞移植の7日前に接種し,その予防効果を検討した。腫瘍体積を比較したところ,IL2+B7+IFNγ処理群,IL2+B7群,IL2群の順で,腫瘍体積の有意な減少を認め(P<0.01),さらにその後の生存率もIL2+B7+IFNγ処理群50%,IL2+B7群37.5%,IL2群25%と遺伝子非導入腫瘍ワクチン群およびPBS投与群に比較して有意な上昇を認めた(P<0.01)。一方B7群,IFNγ処理群はやや延命効果を認めるものの全例死亡した。さらに親細胞移植後翌日各放射線照射腫瘍ワクチンを投与し,治療効果を検討したところ,IL2+B7+IFNγ群、IL2+B7群で腫瘍体積の有意な減少を認め(P<0.01),生存率はそれぞれ25%,12.5%と遺伝子非導入腫瘍ワクチン群およびPBS投与群に比較して有意に上昇した(P<0.01)。各腫瘍ワクチンの肺転移抑制効果を検討したところ,肺の結節数はIL2+B7+IFNγ群,IL2+B7群,IL2群の順で,遺伝子非導入腫瘍ワクチン群およびPBS投与群に比べ,有意に減少した(P<0.01)。 以上の結果から,アデノウイルスベクターを用いて細胞接着分子B7とIL-2遺伝子を導入した腫瘍ワクチンは,さらにIFN-γで前処理することにより,腫瘍増殖予防効果のみならず,治療効果および肺転移抑制効果も誘導できることが明確となった。
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