研究概要 |
我々は,レーザーのマイクロプロセシング技術を応用し,レーザーを用いて顕微鏡下で無菌かつ非接触操作による,目的の細胞どうしを選択的に融合させる新しい細胞融合法を開発した.これは,任意の2個の細胞をレーザーを用いて捕捉・移動・近接させ,パルスレーザーにて両細胞にピンホールをあけ,融合させる方法である.そして,マウスのmyelona cell(SP2)とマウスの脾臓から分離したリンパ球の細胞融合に成功し,融合細胞がHAT培地でも生存し,増殖し続けることを確認した.さらに,融合細胞がIgGを産生していることを免疫法(オクタロニ-法)で検出し,融合細胞がIgG産生hybridomaであることを証明した.この研究から,細胞どうしの接触状態,細胞膜の硬さ,核の大きさ,細胞質の量等も融合率に影響を与え,SP2のような細胞質の豊富な細胞どうしの細胞融合は容易であるが,リンパ球のように細胞質が少なく,ほとんど核だけで細胞膜の硬い細胞どうしの融合は比較的困難であることが判明した.また,マウス肝実質細胞のような大型の細胞を捕捉するための条件の検討を行い,マウス肝実質細胞では,SP2に比べ,約5倍のレーザー出力を必要とすることが判明した.以上,大型の細胞を用いて細胞融合を行うためには,さらなる検討が必要であるが,本法は,極めて少数の目的細胞の,1対1の選択的な細胞融合が高い効率で可能であるという特徴があり,いままでの細胞融合法では融合が難しいとされていた細胞にも応用可能であると考えられる.
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