研究概要 |
ビデオ強調型顕微鏡を用いて,胃幽門腺細胞から粘液顆粒が放出される様子を観察してきたが,胃粘膜細胞においても安定した計測が可能となっており,ムスカリン受容体刺激では,Ca^<2+>を2次伝達物質としてエキソサイトーシスを起こすことを既に報告している。8年度は微小循環を主体に粘膜保護作用があるとして注目されるようになってきたNO,ムスカリン受容体刺激による粘液分泌反応にどう影響するのかを観察してきた。胃粘膜上皮細胞におけるリアノジン受容体Ca^<2+>遊離チャンネル(RYR)の存在も想定して,Caffeineによる放出反応の変化も観察し,粘液顆粒放出反応に関する機序について検討を加えた。その結果、L-ArginineとCChの同時刺激での反応はCCh単独刺激時の2.2倍に増大し,L-NAMEで抑制された。また,CaffeineにCChを加えて同時刺激した場合の反応は,CCh単独刺激時の10倍以上にまで増大したが,この相乗効果はProcaineで可逆的に完全抑制されることが明かとなった。そして、NOの基質であるL-Arginineの開口放出反応での作用機序の一つに,cGMPがADP-ribosylcyclaseを活性化して生じる生体内Caffeine様物質cADPRが,RYRからCa^<2+>を動員する経路も推定された。NO/cGMP系がCa^<2+>を2次伝達物質とするM受容体刺激による粘液分泌機構において,重要な役割を担っている可能性があると結論した。一方,M受容体刺激での分泌反応はCaffeineで著明に増強され,この増強効果がProcaineにより完全に抑制されたことから,作用機序として細胞質内Ca^<2+>動員には主にRYRが関与していると推測され,胃上皮細胞内にもRYRが存在している可能性が初めて示された。また,この増強効果はCCh刺激によりInsP_3Rから遊離したCa^<2+>が,Caffeineで感受性の亢進したRYRに作用し,より多くのCa^<2+>動員がなされたことにとに起因すると考えられるが、そのメカニズムの解明には、さらに研究を要する。
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