研究概要 |
小児消化器外科領域で直腸肛門疾患の頻度は高い。しかし術後排便機能不良で術後経過観察上、問題となることも多い。その術後排便機能をより客観的に評価することは重要で従来の肛門内圧検査では似たような所見を呈しながら排便機能が異なる例も稀ではなかった。排便と中枢神経系との関連に注目し肛門管ないし直腸末端部で自ら企画立案し制作したこけし状電極より電気刺激し大脳誘発電位を記録しその波形を構成するファクターで排便機能と関連する指標があるかどうか検討した。対象を直腸肛門奇形術後遠隔期例(7歳以上)とし病型や排便機能を表すKellyの臨床スコア等と対比した。電気刺激に対する知覚は肛門より直腸の方が鈍かったが刺激電極の方向による差、病型による差、臨床スコアとの関連は何れも有意でなかった。誘発電位は再現性を得ることは難しい上に明らかなP2,N2各ピークを見いだせないようなV字型の誘発電位波形を示すことが多く同一部位で繰り返し測定せざるを得なかった。誘発電位波形から得られたOnset time値,P1潜時値,N1潜時値,各振幅比:Onset Time/P1,P1/N1等からは同一症例内、症例間毎にばらつきが多く排便機能に結びつく有力な指標が見いだせなかった。この様な現象は直腸肛門由来の内臓感覚が無髄神経主体で、体性神経経路のものと内蔵神経経路のものが複雑にくみ合わさり構成されていることによりおこり、これにより再現性のある誘発電位が得にくかったものと推定された。
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