研究課題/領域番号 |
07671375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器外科学
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研究機関 | 福井医科大学 |
研究代表者 |
山口 明夫 福井医科大学, 医学部, 助教授 (10174608)
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研究分担者 |
廣瀬 和郎 福井医科大学, 医学部附属病院, 講師 (00181199)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1996年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1995年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | CD44 / CD44 variant exon 8-10 / liver metastasis / colorectal cancer / CD44 variant exon 8,9,10 |
研究概要 |
接着分子CD44はalternative splicing機構により多くのアイソフォームからなり、そのなかには癌の浸潤、転移に関与するものがあることが推察されている。本研究では大腸癌における細胞接着分子CD44 variantと転移との関係を検討した。大腸癌においてRT-PCRおよびDNA sequenceによる検索をおこなったところ、CD44v8-10の発現増強が癌巣において認められた。さらにCD44v8-10のspecific probeを使用し、Northern blot analysisにて大腸癌巣のRNA発現量みると、肝転移陽性例においてその発現量が有意に高値を示した。そこでCD44v9に対するモノクローナル抗体を作製し、CD44v8-v10を含むvariant CD44蛋白(以下CD44v8-10)の発現を免疫組織化学的に検討した。大腸癌215例中CD44v8-10陽性は100例(46.5%)で、その発現と血行性転移との間に強い相関がみられ、血行転移陽性例でのCD44v8-10陽性率が78.7%と陰性例の33.8%に対して有意に高率であった。また治癒切除例での再発率はCD44v陽性例で有意に高く、またその予後も不良であった。さらにサンドウイッチ法によるELISA systemにて血清中CD44v8-10値の測定を可能とし、健常人および大腸癌患者にてその値を測定し、その有用性についても検討した。その結果健常人に比し大腸癌患者での血清中CD44v8-10が有意に高値を示した。また臨床病理学的には静脈侵襲陽性ならびに肝転移陽性例でのCD44v8-10値が陰性例に比して有意に高く、血清中CD44v8-10は血行性転移のマーカーとなりうることが示唆された。次にヒト大腸癌細胞株HT29をもちいたマウス肝転移モデルにおいて、抗CD44v8-10抗体(mAb44-1V)の肝転移抑制についての検討もおこなった。in vitroでの増殖にはmAb44-1Vで処理したHT29とmouse IgGにて処理したHT29の間に有意な差はみられなかった。しかしin vivoにおいて、IgG処理群では脾臓内投与により全例に肉眼的に肝転移が認められたのに対して、mAb44-1V処理群では9匹中1匹に肝転移がみられたのみで、結節数も少なく、mAb44-1Vによる肝転移抑制が確認された。一方mAb44-1Vの静脈内投与では転移能に影響はみられず、肝転移を抑制することはできなかった。 以上より、接着分子CD44v8-10は大腸癌における血行転移において、初期の段階での肝の血管内皮への接着に関与している可能性が示唆された。またその免疫組織学的および血清学的検索は血行性転移のマーカーならびに予後予測因子として有用であることが示唆された。
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