研究概要 |
単球表面抗原の内、CD11bは単球の遊走に関与し、HLA-DRは単球/マクロファージが認識した抗原をT細胞へ提示することにより細胞性免疫に関与しているとされている。周術期における、この単球の表面抗原の変動と血中サイトカイン(IL-6, IL-8, IFN-r)の変動の関係を検討した。【対象と方法】1995年7月〜1996年4月までの当科での手術例、胃癌群(G群)23例、食道癌群(E群)8例、膵臓癌(膵頭十二指腸切除例)群(P群)7例、緊急手術(良性疾患の腹膜炎)群(Em群)4例を対象とし、術前、術後1、3、5、7、14日目の末梢血単球の表面抗原CD11b及びHLA-DRのMean Fluorescence Intensity(以下MFI)をFACSCANにて測定した。また同時日における血清IL-6, IL-8, IFN-rをELISAにて測定した。これらの症例は術後感染症はみられなかった。【結果】G群;E群;P群;Em群の単球数は各群間に有意差は認めなかった。CD11bのMFIは術前値、第1病日、第14病日のG群;E群;P群;Em群それぞれ、37.7, 29.8, 33.0 ; 29.6, 18.6, 18.3, ; 32.1, 29.4, 22.5 ; 12.3, 19.1, 39.7であった。HLA-DRのMFIは同様にG群;E群;P群;Em群それぞれ、62.7, 46.9, 48.0 ; 61.9, 65.0, 83.9 ; 48.7, 38.8, 27.5 ; 113.5, 27.0, 98.2であった。血清IL-6値はG群は漸増し、E群は第14病日まで漸減した。Em群は術前高値で第1病日に急減し、以降低値で経過した。血清はIL-8値はE群で術前高値を呈し、第14病日まで漸減したが、全ての群より有意に高値であった。【考察】E群でのCD11bの低下は単球の機能的変化を示唆し、IL-8等の高サイトカイン血症に基づくSIRSの病態に深く関与していることが示唆された。
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