研究概要 |
目的:従来承認されてきた肝切除限界を越えた拡大切除後の肝類洞壁細胞機能に着目し,nitric oxide (NO)や接着分子(ICAM-1)の発現から,残存肝機能障害発生の病態を解明し,これを軽減するための脾摘の効果についても検索する。 実験群:イヌを用い,正常肝84%切除群(拡大切除)と対照とした正常肝70%切除群で基本的に検討し,この成績に基づいて84%切除と同時に脾摘併施群を作成し,脾の役割を明かにする。 検索項目:肝細胞機能,肝類洞壁の内皮細胞機能(ヒアルロン酸),Kupffer細胞機能(エンドトキシン),肝組織血流量,NO(生体分光計),ICAM-1(免疫組織染色)を肝障害の最も高度な術後24時間内で検索。 成績: 1.拡大肝切除では内皮細胞機能障害が強く,肝微小循環障害度と強く相関。 2.内皮細胞機能障害の強いもの程,ICAM-1の発現が著しく,NOは一過性の上昇を示すのみで,微小循環不全をきたし,肝細胞機能の不可逆的障害を招来した。 3.脾摘併施により,内皮細胞機能障害が軽減され,NOは高値を維持し,ICAM-1の発現低下など微小循環も保たれ,残存肝機能障害が改善された。 結論:拡大肝切除後の残存肝機能障害は、内皮細胞機能障害に基づく,肝微小循環不全と相関し,NOや接着分子の発現が,この内皮細胞障害度に依存しており,また脾マクロファージはこの増悪因子と考えられた。
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