研究概要 |
本研究では消化器癌切除材料を用い分子生物学的手法により癌遺伝子関連としてのc-erbB-2,癌抑制遺伝子としてのDCC,CDKinhibitor(p16)の遺伝子または蛋白発現の量的・機能的異常と臨床的悪性度との関連について検討した。 【癌遺伝子関連】 1.原発性大腸癌146例の切除標本を用い、免疫染色にてc-erbB-2蛋白の発現の有無と悪性度との関連性について検討した.その結果,発現陽性率は約64%で腫瘍径,深達度,予後との間に相関を認めた。他の病理学的因子とは相関を認めなかった(論文発表済み)。 2.c-erbB-2蛋白はチロシンキナーゼとして知られている。そこで本年度は特に大腸癌切除標本を用いc-erbB-2蛋白のチロシンリン酸化の程度と病理学的因子の関連について検討を進めた。その結果,c-erbB-2蛋白のリン酸化の程度と肝転移との間に強い相関を示した(論文印刷中)。 【癌抑制遺伝子】 1.胃癌74例の切除標本を用い,PCR法にてDCC遺伝子、特に対立遺伝子のヘテロ接合性の欠失と(18q LOH)と悪性度との関連性について検討した。その結果,39%に欠損を認め,LOHとしょう膜浸潤・予後との間に相関を認めた(論文発表済み)。 2.消化器癌56例の切除標本を用いPCR法にてCDKinhibitor(p16)の遺伝子欠失(9p21 LOH)の有無と悪性度との関連性について検討した.その結果,36%に欠失を認め,予後との間に相関を認めた(論文発表済み)。 以上,消化管癌切除材料を用い分子生物学的手法によりc-erbB-2、DCC、CDKinhibitor(p16)の遺伝子または蛋白発現の量的・機能的異常と悪性度のとの関連性について検討してきた。その結果、癌遺伝子関連としてのc-erbB-2の過剰発現および癌抑制遺伝子としてのDCC、CDKinhibitor(p16)の欠損が、消化器癌の悪性度と著明な関連を示し、癌悪性度評価における遺伝子診断の重要性を明らかにした。
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