研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の原因として、Tリンパ球やマクロファージを中心とする免疫系の活性化、さらに直接大腸粘膜に作用し障害を起こす一酸化窒素(nitric oxide,NO)や活性酸素の上昇が報告されている。本研究ではUC患者治療中の血中および尿中のNOを最終産物であるNO_2、NO_3として、さらに血中の炎症性サイトカインを測定し、それらの変動から治療効果と病期決定について検討した。NOは活動期に有意に高値を示し、健常人の約2〜5倍であった。ステロイド剤投与後、NOは低下したが、NO_2の優位な上昇がみられ、これはUC粘膜ではpHが低下しNOからより強力な細胞障害を起こすパーオキシナイトライトやOH^-の産生亢進を示している。寛解期ではNO_3、NO_2ともに低下した。活動期の血中サイトカインはTNF-α、IL-2,IL-3,IL-6の上昇がみられ、UC粘膜における免疫系の活性化、すなわちヘルパー・1T細胞優位であることが考えられた。寛解期ではこれらのサイトカインは検出されず、ステロイドは炎症細胞、および上皮細胞のサイトカン、NOの産生を抑制する効果を示した。一方、ステロイド耐性例では、NOは高値を持続し、NO産生酵素の活性化に違いのあることが示唆された。最近の知見で活動期 UC患者の血清から抽出したDNAはアガロースゲルを用いた電気泳動で断片化を示し、血中のサイトカインも上昇することから、潰瘍形成はNOやフリーラジカルによる上皮細胞のアポトーシスであることが考えられた。今後UC粘膜における免疫系の活性化、NOなどのフリーラジカルの産生上昇と上皮細胞のアポトーシスとの関連の解明が望まれる。
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