研究概要 |
開心術後の肝および腸肝循環に関して,肝静脈血酸素飽和度(S_<HV>O_2)と胃粘膜pH(pHi)を用いて検討した.胃粘膜pH(pHi)の測定はトノメーター(Tonometrics社)を胃内に挿入して行い,肝静脈血酸素飽和度(S_<HV>O_2)の測定はカテーテルを右または中肝静脈に留置して行った.集中治療室(ICU)入室時の心係数(CI)および混合静脈血酸素飽和度(S_VO_2)は良好に維持されていたが,S_<HV>O_2は50%以下と低く,pHiも平均7.2とアシドーシスの状態にあった.入室12時間後には,pHiは有意に上昇し,S_<HV>O_2も50%以上となった.入室24時間後ではpHiは正常範囲となった.体外循環後の消化管粘膜の血流は,心拍出量が維持されていても低下しており,この血流異常分布は術後24時間以内に改善した.また,術後低心拍出量(LOS)症候群を呈した症例では,心拍出量の低下が肝血流低下で代償されており,予後も不良であった.LOS症例では長時間の消化管領域の血流低下が合併症の誘因となり得ると考えられた.以上より,開心術後症例における肝静脈血の分析は消化管領域の血流評価に加えて,予後を反映する指標として有用と考えられた.開心術後は体外循環に伴う血流のmaldistributionが残存し,心拍出量が良好であっても,消化管領域の血流低下の改善には12から24時間を要する.S_<HV>O_2及びpHiは消化管領域の血流の評価に有用な指標と考えられた.
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