研究概要 |
ゼラチンコーディングしたMarlex meshを用いた気管形成術の実験的研究を行った。代用気管として2枚のMarlex meshの間にステンレス製の格子を挟み弯曲を形成し,さらに全体をゼラチンコーディングしたものを作製した。代用気管は実験の直前にリファンピシンを溶解した生食水に15分間浸漬した。実験1では,ビ-グル犬7頭に頸部気管に部分欠損を作成し上記の材料で補填した。1頭に代用気管周囲に感染を認め,5頭に主に肉芽による気道狭窄を認めた。完全に上皮化したものは7頭中2頭であった。この実験でゼラチンが硬く針が通りにくいこと,ゼラチンが剥がれ易いことなどが判明した。実験2では,ゼラチンを軟らかくしさらにゼラチンの層を厚くしU字型の代用気管を作製した。ビ-グル犬3頭に頸部気管で膜様部を残しほぼ全周の欠損を作成し代用気管で補填した。1頭に代用気管周囲に感染を認めた。2頭に吻合部の肉芽形成を認め,他の1頭はメッシュが落ち込み,3頭とも気道狭窄をきたした。上皮化は3頭とも認められず,2頭はゼラチンが残存し1頭はメッシュが露出していた。レーザー血流計による粘膜血流量は,正常気管や吻合部に比較し,代用気管中央部で明らかに低下していた。 今回,感染防御効果,組織親和性,上皮化促進を期待しゼラチンコーディングしたMarlex meshにリファンピシンを結合させた代用気管を用いて気管形成術の実験的研究を行ったが,感染防御の点はある程度の成績は得られたものの,上皮化の点は成績不良であった。この原因としては代用気管部の血流不足が大きな原因と考えられた。今後は,コーディング材料の再検討と有茎大網や有茎筋肉弁による代用気管の被覆が必要と考える。
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