研究概要 |
FISH法を用いて肺癌患者の染色体異常の解析を行い,生物学的悪性度の各指標,臨床背景因子と比較検討し臨床応用の可能性を評価した.【対象】原発性非小細胞肺癌切除例74例を対象とした.男58例,女16例,平均年齢65歳であった.組織型は腺癌40例,扁平上皮癌34例,病期はI期19例,II期11例,IIIA期22例,IIIB期7例,IV期15例であった.【方法】次の項目を測定した.1.FISHによる第17番染色体数の測定.2.p53の免疫組織染色.3.PCNAの免疫組織染色.4.フローサイトメトリーによる核DNA量の測定.【結果】1.p53蛋白発現例は74例中37例(50%)で,扁平上皮癌,病期進行例,TNM各因子進行例,aneuploid症例で有意に多かった.2.PCNA高値群は74例中35例(47.3%)で,扁平上皮癌,低分化度症例,病期進行例,T因子進行例,CEA値高値例,aneuploid症例で有意に多かった.3.第17番染色体異常は74例中22例(29.7%)に認めた(CCN1,7例; CCN1and3,15例).4.CCN1and3は,病期,T因子,N因子,組織型,p53蛋白発現,PCNA標識率,生存率の各因子と有意な関連を認めた.5.CCN1はM因子と,CCN3は病期,N因子,組織型,p53蛋白発現,PCNA標識率の各因子と有意な関連を認めた.6.FITC spots meanは,病期およびN因子と有意な関連を認めた.7.CCN2の予後(5生率31.4%)はCCN1and3(同4.9)に比べ有意に良好であった.Aneuploid症例でもCCN2の予後(5生率30.8%)はCCN1and3(同5.0%)に比べ有意に良好であった.【まとめ】肺癌において染色体構造異常,癌遺伝子および細胞増殖能を比較検討することにより肺癌の進展,悪性度がより明確となり,今後治療法にも直結していく可能性が示唆された.
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