研究概要 |
心筋細胞の氷結点は,約-0.6°Cにある.しかし心筋温を徐々に低下させると,氷結点以下においても未凍結状態が可能である.過冷却状態(-1°C)における心保存効果を実験的に検討した.グループを2群(A群=4°C保存群,B群=-1°C保存群,各群n=6)に分類し心機能,心筋内アデニンヌクレオチド含量,心筋水分含量について比較検討した. 1.心機能の評価.6時間保存後の心機能の回復率を比較した.大動脈流量回復率(A群:53.1±16.6%,B群:78.8±13.5%),心拍出量回復率(60.9±13.1%,77.1±11.4%),大動脈収縮期圧回復率(79.4±10.9%,100.9±8.1%)においてB群はA群より有意(p<0.05)に高値を示した. 2.心筋内アデニンヌクレオチド含量.6時間保存後のATP(A群:11.1±3.7nmol/mg protein,B群:25.7±4.0),ADP(15.0±5.0nmol/mg protein,21.2±2.8),Total adenine nucleotides(29.5±10.0nmol/mg protein,49.8±3.4)においてB群はA群よりも有意(p<0.01)に高値を示した. 3.心筋水分含量.再灌流70分後では,B群がA群よりも有意(p<0.05)に低値を示した(A群:5.5±0.8mlH_2O/g dry weight,B群4.6±0.3).これらの結果から本実験において,-1°C保存は4°C保存よりも良好な心保存効果のあることが示唆された.しかし過冷却状態は不安定であり振動などにより凍結の危険性がある.現在,凍結保護剤である2,3-Butanediol保存よりも良好な回復を示す結果がでている.
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