研究概要 |
ヒトParkinson氏病に対する自家頚部交感神経節脳内移植の移植効果への影響因子について検討した。平成7年には臨床的因子、平成8年には星状交感神経節の生物学的因子の検討を行った。その結果については、詳細に平成7,8年の科学研究成果報告書で報告している。臨床的因子としては、手術時の年齢、罹病記間、重症度(H/Y stage,UPRS)をt-およびchi-square testによる統計学的検討を加え行った。いずれの因子も統計学的には有意差を認めなかったが、重症度、罹病記間が臨床的因子の中で臨床効果へ影響する重要な因子であることが示唆された。星状交感神経節の生物学的因子の検討として、その移植に用いた星状交感神経節の病理組織像、培養組織の検討をした。病理組織学的には中枢神経系同様の変性所見が観察され、その変性所見としてのLewy小体の有無が、臨床移植効果への重要な影響因子であることが示唆された。培養組織学的にも、神経伸長度,Schwann cellの増生に各症例間で差を認め、神経伸長にinterleukin-1βが重要な一つの生物学的因子であることが示唆された。平成9年度には、平成7,8年度の結果について統計学的検討を含む詳細な検討を行なった。神経伸長度については、2週後の神経突起伸長度より3群-1).神経突起伸長が良好(≧500μm)、2).神経突起伸長が中等度(<500μm)、3).神経突起伸長が不良-早期にSchwann cellの増生を認める。に分類し得、interleukin-1β細胞上清濃度は、神経伸長度1)群-12.93±1.47 2)群-8.72±4.52 3)群-2.3±0.57pg/ml(平均±標準偏差)を示した。神経伸長度と培養上清interleukin-1βとの間に統計学的有意差がないものの相関傾向を示した。interleukin-1β産生が、Schwann cell由来が神経細胞由来かを今後、さらに検討を要する。 以上、ヒトParkinson氏病に対する自家頚部交感神経節脳内移植の移植効果への影響因子について、臨床的因子およびドナー組織の生物学的因子について明らかにした。ドナー組織の変性の程度を術前に判定できない点が問題点として残された。
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