研究概要 |
我々は、人下垂体腫瘍におけるpit-1発現の意義を主としてreverse transcription polymerase chain reaction method(RT-PCR)を用い検討した。その結果1)pit-1mRNAは、そのisoformも含め正常人及びratの下垂体で認められ、また全てのGH,PRL,TSH産生腺腫でその表出が認められた。しかしそれらの腺腫のbiological behaviorやhistological featureとの間に明らかな相関はなく、従って細胞のphenotypeの決定には、必要な因子と思われるが、それらの腫瘍のホルモン活性や腫瘍の増殖には必ずしも必要ではないことが示唆された。2)ACTH産生腺腫(2/4)や非機能性腺腫(7/10)の一部でもpit-1mRNAの表出が認められた。しかしこれらPit-1mRNAの表出が認められたACTH産生腺腫2例と非機能性腺腫の一部(4/7)では、同時にGH,PRL,and/or TSHβ mRNAの表出が認められ、従ってそれらの腫瘍でのPit-1mRNAの表出は、GH,PRL,and/or TSHβ mRNA表出細胞(それが腫瘍細胞なのか、腫瘍に取り込まれた正常下垂体細胞なのかは、現在不明であるが)に由来する可能性が示唆された。しかしGH,PRL,and/or TSHβ mRNAの表出を認めずにpit-1mRNAの表出を認めた非機能性腺腫が3例あり、これらの非機能性腺腫におけるpit-1蛋白の遺伝子発現については、今後の検討を要するものと考えられた。3)検討症例37例中2例でpit-1αmRNAのみが検出されたが、他のisoformは検出されなかった。しかしこれら2例と、pit-1α及びそのisoformのmRNAが共に検出された残り35例を比較すると、その臨床像、病理形態像に明らかな差はなく、これら各isoformのpit-1蛋白の意義に関しては、定量的RT-PCR法等での量的な測定と、腫瘍の生物学的活性度や組織形態との比較が今後必要な点と考えられた。
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