研究概要 |
(1)化学メデイェーターによる異所性発火発現のin vivo解析 動物には成熟ラット20頭を用いた。麻酔下に頚髄を切断し,非動化した上で人工呼吸にて維持した。腰椎を椎弓切除し,腰部神経根を知覚神経節まで露出した。標的神経根の中枢側を細分し,神経根活動を導出記録した。これまでin vitro実験にて同定した髄核、サプスタンス-P、コンドロイチン硫酸,プロスタグランジンE2を硬膜外より神経節部に限局性に投与することにより異所性発火の発現を観察した。 (2)化機械的刺激に対する反応の解析 実験条件は(1)に準ずる。椎間板ヘルニアの病態を再現するため,ステップモータ制御の定速動作マニュピレータを用い,神経根に牽引力を加えた。この際異所性発火の発現が観察されたが、これは興奮伝導の方向性から知覚神経節より生じていると考えられた。 (3)ヒトにおける術中microneurogramの解析 腰椎椎間板ヘルニアおよび狭窄症による神経根障害の手術的治療患者を対象とし,術中においてmicroneurogram電極を用いて神経根の感覚神経活動を多ユニツトレベルで導出記録した。知覚神経根から神経根中枢部に沿って圧迫を加え,異所性発火発現の様式を観察することによりその発火の発現部位を同定する。このようにして得られた知見を健常神経根の場合と比較し,障害神経根の機械的刺激に対する異所性発火を観察できた。機械的圧迫刺激による異所性発火閾値は神経節部位できわめて低かった。 本研究のから神経根障害における疼通などの異常感覚の病態と治療の意義を理解する上で重要な知見が得られた。さらに,本研究モデルでヒトの病態をシミュレートすることにより,ヒト変性髄核および神経根周辺組織について綿密な生化学環境動態との関係を解明することが今後の重要課題と考えられた。
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