研究概要 |
(1)頚髄症症例の運動機能解析と手術的治療による影響: 頚髄症10例につき,先ず手関節を随意に固定した状態で随意最大速度における手指の連続屈曲進展運動を10秒間行わせた。その際手指および手関節の屈筋と伸筋から筋電図を多チャンネル同時に導出・記録した。その結果、屈曲伸展運動の障害には特に伸筋側の協調障害が関与していることが分かった。また肘・前腕の協調運動計測に際しては,患者を仰臥位とした上で,当科で独自に開発制作した運動負荷装置にて肘屈曲進展と前腕の回内外の組み合わせ運動を解析した。肘角度の随意固定と前腕の低速から高速の回内外運動を設定し,その運動中の肘屈曲・伸展筋,回内外筋の活動を解析した結果、頚髄症においては上腕二頭筋の回外作用にともなう屈曲力に対する肘伸筋の同期性が失われていることが判明した。さらに脳磁気刺激装置による運動誘発電位を解析した結果、silent periodのパラメータが頚髄症において変化していること分かった。このような計測で得られた知見をもとに、脊髄内に存在する神経回路のシミュレーション手法によってその障害様式が推定できた。各患者について術前および術後に計測を行い比較を行なうことにより手術的治療により変化しうる,すなわち可逆性および可塑性を有するパラメータが同定できたが、この状況は術前にプロスタグランジン投与を行うことによりある程度は予め予測できることも判明した。 (2)動物実験による解析: 当初の予定とは変更し、ラットのin vitro脊髄・後肢モデルを用いた。このモデルにおいて,セロトニンが脊髄運動プログラムの制御に関与すること、グルタミン酸やサプスタンスPがその活動を強く修飾すること、プロスタグランジンが痙直の抑制に作用することなど、臨床的にも重要ないくつかの知見が得られた。
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