研究概要 |
圧迫性頸髄症における運動障害には脊髄灰白質の血行障害と局所の低酸素状態が関与していると考えられる。そこでin vitro頸髄標本を用いて脊髄運動誘発電位に対する低酸素の影響を調べた。【方法】生後0〜7日のラットの頸髄摘出標本で、脊髄前側索をC1レベルで最大上に刺激し、C7前根より運動誘発電位(VR-MEP)を記録した。90分間低酸素負荷後、60分間再酸素化してVR-MEPの変化をモニターした。【結果】VR-MEPのコントロール波形では二つの陽性波(P1,P2)が見られた。環流Ca^<2+>とMn^<2+>の置換、及びKynurenic acid 1mM投与により、P1,P2は可逆的にブロックされたため、VR-MEPはシナプスを介する興奮性の運動誘発電位と考えられた。低酸素負荷により潜時は遅延し、振幅はP1,P2共に負荷後10分〜40分にそれぞれ133%,149%まで一過性に増大した後、90分で30%,35%まで漸減した。再酸素化60分後には振幅は78%,95%まで回復した。Picrotoxin 1μMとStrychnine 2μMを投与して抑制性シナプス伝達を遮断後、低酸素負荷すると早期低酸素時の一過性振幅増大は起こらなかった。【考察】以上より低酸素の早期には脊髄の抑制性シナプス伝達が選択的に障害されるため運動誘発電位の振幅が一過性に増大し、さらに長期の低酸素状態では興奮性伝達も抑制されるため振幅が減少すると考えられた。
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