研究概要 |
[平成7年度]グリオスタチン(GLS)は、血管内皮細胞に対して走化性をもち、in vivoにおいて血管新生を促進する。また慢性関節リウマチ(RA)患者の血清、関節液中に高濃度に存在することが報告されている。RAにおけるサイトカインネットワーク中のGLSの位置付けを解明するためRA関節液中のサイトカイン濃度とGLS濃度との相関関係を検討した。関節液中においては、GLS濃度はinterleukin-1(IL-1),IL-8濃度と相関関係があった。次に培養滑膜細胞でのGLS産生を検討するために、人工膝関節置換術のさいに採取した滑膜を初代培養し、3代から9代継代した。この培養滑膜細胞をIL-1,IL-6,IL-8,tumor necrosis factor α(TNFα)にて刺激したところGLSタンパクの産生が認められた。 [平成8年度]人工膝関節置換術のさいに採取した滑膜を初代培養し、3代から9代継代した培養滑膜細胞でのGLSの発現をReverse transcription-polymerase chain reaction法を用いてmRNAレベルにて検討した。無刺激の培養滑膜細胞でのGLS mRNA/β-actin mRNA比を1.00とするとIL-1,TNFαにて16時間刺激するとそれぞれ4.37、2.64倍となりGLSmRNAの発現が誘導された。 GLScDNAを組み込んだ発現ベクター(pET-His)をE.coliにトランスフェクトしGLSを発現させGLS組換体を大量に調製した。in vivoでの作用を検討するためGLS組換体をウサギ膝関節腔内に注入すると、微小血管の増生、炎症細胞の浸潤、リンパ球の集簇などRAに類似した滑膜炎が惹起され、その炎症反応は、投与量、投与期間に比例した。
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