研究概要 |
近年、硬膜外へ穿破した髄核は、吸収されるという事実が明らかになってきた。今回、吸収過程の段階を明らかにするため68例の手術摘出標本にHE染色による組織学的検索を行い、炎症細胞の出現を認めた16例(術前Gd-DTPA造影MRI陽性、硬膜外穿破、14例は急性発症(6-18週))にモノクローナル抗体(CD2,CD3,CD4,CD8,CD11b,CD14,CD25,CD56,CD68,CD121)を用いた免疫組織学的検索を行い、染色状態を0-3段階(GradeO:0,Grade1:1-10,Grade2:11-20,Grade3:21以上多数)に分類し、染色された細胞数の測定を行った。その結果、症状が高度で髄核成分に富んだ12例(6-18週)ではCD4、CD68、CD121の染色状態はGrade3であり、異物反応により髄核が吸収されている過程であることが示唆され、さらに、症状が改善され、髄核が吸収されたと思われた2例(12週、18週)は、CD11bの染色状態が3であり、異物反応が終了したものと考えられた。さらに臨床経過が長い2例(26週、28週)のヘルニア腫留はそれぞれ線維輪、終板であり、CD68以外はほとんど染色されておらず、髄核成分はすでに吸収され、線維輪、終板には異物反応が起きないことを示した。また家兎の髄核と線維輪を各々硬膜外へ移植し、3日、1週、2週、3週後に移植した髄核、線維輪を摘出し、CD68、CD4、CD8を用いた免疫組織学的検索を行った結果、3日より髄核にCD68が認められ、1週以後ではCD4、CD8も陽性を示した。一方線維輪では炎症細胞はほとんど認められなかった。以上より硬膜外に穿破した髄核(無血管組織)は非自己として識別され3日以内にマクロファージが集合し吸収が始まり、1週以内にT細胞も加わり、早いものでは4週以内に吸収されるものと考えられた。
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