研究概要 |
(目的)細胞障害性T細胞のキラー機能およびその誘導過程に吸入麻酔薬(Sevoflurane,Isoflurane,Holothane)が及ぼす影響について、マウスを用いたin vitroの実験系により検討した。 (方法)マウス(C57BL/6)に予め坑アシアロGM1抗体を静注し、Natural Killer細胞を除去した。脾臓を摘出後、脾細胞浮遊液(1×10^7個)としrecombinant IL-2 1000単位/mlとともに96時間培養し、Lymphokine activated Killer Tcell(Tcell-LAK)を作成した。このT細胞を各吸入麻酔薬1MAC,2MAC,4MAC暴露下で3時間培養後、P815を標的細胞とした51Cr放出試験を行い、キラー機能に吸入麻酔薬が及ぼす影響について検討した。キラー機能誘導過程に及ぼす影響については、IL-2添加培養時の24時間または96時間を各吸入麻酔薬暴露下で培養後、キラー機能を測定して対象群の非暴露群と比較検討した。 (結果と考察)IL-2により誘導されたTcell-LAKのキラー機能は吸入麻酔薬により抑制された。すなわち、Isofluraneは臨床使用濃度でも抑制し、Halothaneは高濃度でのみ抑制したがSevofluraneは有意な抑制を認めず、麻酔薬の種類により作用の強さに差異が認められた。また、誘導過程においては、初期の24時間ではIsoflurane,Halothaneは有意にキラー機能を抑制したが、Sevofluraneは有意な抑制を認めなかった。96時間ではIsoflurane,Halothaneはキラー機能を消失させたが、Sevofluraneは活性を抑制したものの消失までには至らなかった。このことから、吸入麻酔薬はIL-2によるTcell-LAKへの誘導を抑制するが、初期の24時間では完成しないことが明らかになった。 以上の結果から、吸入麻酔薬(Isoflurane,Halothane,Sevoflurane)は作用の程度は異なるものの、IL-2により誘導された細胞障害制T細胞のキラー機能と、その誘導過程を抑制することが明らかとなった。
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