研究概要 |
1 Nerve growth factorによる神経線維伸長への麻酔薬の影響 ジブカイン30μM,テトラカイン200μMは、NGF刺激による神経線維のネットワーク形成に影響しなかった。これらより高濃度のジブカイン、テトラカインでは、細胞死あるいは、細胞内空胞形成が認められた。 2 脱分極によるcFos発現誘導への麻酔薬の影響 ジブカイン、テトラカイン、プロポフォールは、50mM KClによるcFos発現を濃度依存性に抑制した。ジブカイン、テトラカイン、プロポフォールは、それぞれ30μM,50μM,50μMで抑制が見られた。KClによるcFosの発現誘導は、3mM EGTA,10μMニフェジピンで抑制されたが、3μMω-コノトキシンでは抑制されなかったことからL型カルシウムチャンネルからのカルシウム流入に依存していた。cFos発現を抑制したジブカイン、テトラカインの濃度は、脊髄ganglion cellのL型カルシウムチャンネルを抑制すると報告されている濃度にほぼ一致した。また、KClによるcFosの発現誘導は、MEKキナーゼ(MAPキナーゼ キナーゼ)阻害剤であるPD98059によって抑制された。従って、ジブカイン、テトラカインは、L型カルシウムチャンネルあるいはその下流の情報伝達経路を抑制することで、cFos発現を抑制していると推測された。 3 脱分極によるMAPキナーゼ活性化への麻酔薬の影響 ジブカイン、テトラカインは70mM KClによるMAPキナーゼ活性化を濃度依存性に抑制した。10μMジブカイン、50μMテトラカインでMAPキナーゼ活性化の抑制が見られた。 以上の結果から、ジブカイン、テトラカインは、神経細胞のMAPキナーゼシグナル伝達経路を抑制し、核における遺伝子発現を抑制する可能性が考えられた。また、この抑制は、L型カルシウムチャンネルの抑制を介することが推測された。プロポフォールもおそらく同様の作用により、神経細胞のMAPキナーゼシグナル伝達経路を抑制すると予想される。今後は、ヒトの好中球の神経細胞のMAPキナーゼシグナル伝達経路への麻酔薬の影響を明らかにしていく予定である。
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