研究概要 |
<研究より得られた結果> 1.坐骨神経結紮ラットモデルの熱刺激に対する逃避潜時は,明らかに短縮した. 2.坐骨神経結紮により,腰髄背側の結紮側,非結紮側の5-HT濃度は著明に増加した.ノルアドレナリン濃度の増加もまた両側で観察された.結紮側の腰髄背側のグリシンおよびGABAの組織濃度は,著明な増加を示した.さらに,結紮ラット群において,結紮側は非結紮側に比較して有意な高値を示した. 3.結紮後7日目のラットへのメチセルギッドまたはヨヒンビンのくも膜下腔投与は,結紮側および非結紮側の両側ともに逃避潜時を短縮させた.ストリキニ-ネまたはビククリンのくも膜下腔投与は,結紮側の逃避潜時の短縮をさらに増強させた. 4.MK-801を投与しない結紮群でみられた逃避潜時の短縮は,くも膜下へのMK-801を投与した結紮群では認められなかった.MK-801投与結紮ラットにおける5-HT,ノルアドレナリン,グリシンおよびGABAの腰髄後角組織濃度は,MK-801非投与結紮ラット群と比較して低値を示した. 5.坐骨神経結紮ラットの脊髄後角内のグルタミン酸とアスパラギン酸の濃度は,結紮後増加し持続した.MK-801投与結紮ラットにおける興奮性アミノ酸の濃度上昇は認められなかった. 6.結紮ラットの脊髄スライス後角内細胞内カルシウムイオン濃度は,結紮後上昇し維持された.MK-801投与結紮ラットでは,その濃度上昇は認められなかった. <研究により得られた結論> 神経損傷によるニューロパチーモデルラットにおける神経損傷後の病的疼痛状態は,脊髄におけるモノアミン性下行性抑制性系,グリシン作動性およびGABA作動性の抑制系に支配されていることが示された.また,末梢神経損傷により,長期にわたる脊髄後角内にて,持続的な興奮性アミノ酸の放出とその結果,NMDA受容体の活性化とそれに引き続く細胞内へのカルシウムイオンの流入による細胞内カルシウムイオン濃度上昇と細胞内情報伝達系に変化が生じたことが示された.
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