研究概要 |
フォスフォディエステラーゼ阻害薬であるアムリノンが赤血球に及ぼす影響を検討した。 健康成人ボランティア12人から採血し、in vitroで臨床血中濃度の1倍、10倍、100倍量のアムリノン添加群(A1,A2,A3)と無添加のC群を、37℃で3時間加温振盪の後、赤血球のP50、pH-e,-i、PCO2、PO2、BE 血糖、Na-e,-i、K-e,-i、2,3-DPGについて測定した。 P50は予測とは異なり、24.1、24.6、25.1、25.8(C、A3、A2、A1)と有意差はなく、赤血球ヘモグロビン酵素親和性への影響は認めなかったが、2,3-DPG(μmol/mol)は、2.0、1.54、1.55、1.71と有意に低下していた。pH-eは7.319、7.184、7.288、7.314、pH-iは7.086、6.996、7.069、7.083と、各群において用量依存性の有意なアシドーシスを認め、PCO2は30.8、36.8、31.9、30.5と、血糖も80.7、68.8、76.5、76.3と、A3群で有意なPCO2上昇、血糖の低下を認め、赤血球内における代謝亢進が示唆された。しかし、電解質に関しては、Na-e,-i、K-e,-iとも有意な変化はなく、イオンチャンネルに与える影響は軽微と思われた。 以前のジブチリルサイクリックAMP(以下DBcAMP)での実験では、解糖系の代謝亢進と酸素親和性の減少がパラレルに認められた。サイクリックAMPを増加させる点では同じだが、DBcAMPがサイクリックAMPを細胞内に取り入れるのに対し、アムリノンは細胞内サイクリックAMPの分解抑制により細胞内濃度を保持するという機序の差異がこのような結果をもたらすのかもしれない。 今後は、より深い生化学的アプローチとともに、他のPDE阻害薬でも調べ、サイクリックAMPが赤血球酸素親和性に及ぼす影響を明らかにしたい。
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