研究概要 |
ランゲンドルフによるラット摘出心再灌流モデルを用い,活性酸素消去剤であるSOD(Superoxide dismutase)の虚血再灌流不整脈に与える影響を検討し,近年注目されてきたADF(ATL-derived factor)の虚血再灌流不整脈に及ぼす影響を検討した.ADFはSODとほぼ同等の抑制効果を認め,ADF,SODの併用ではそれぞれ単独投与より再灌流不整脈抑制の増強効果を認めた.つづいて吸入麻酔剤(ハロセン,エンフルレン,イソフルラン,セボフルレン),静脈麻酔剤(プロポフォール)の虚血再灌流不整脈抑制効果を検討した.全ての吸入麻酔剤に再灌流不整脈抑制効果が認められた.その強さはハロセン>エンフルレン>イソフルラン>セボフルレンの順であった.静脈麻酔剤(プロポフォール)は1〜50μMで検討した結果,濃度依存的に再灌流不整脈抑制作用を認めた.最も再灌流不整脈抑制効果の強かったハロセンはカテコラミンとの併用で強い心筋感作作用をもち催不整脈作用と再灌流不整脈を抑制する相反する作用を持つ.今回の研究で吸入麻酔剤とエピネフリンの併用は中枢神経を介さないin vitroのモデルでも不整脈を誘発し,またエピネフリン投与下の再灌流状態においては再灌流不整脈発生を抑制した.再灌流不整脈の発生機序についてはまだ完全に解明されてはいないが,これらの結果は再灌流不整脈の機序の相違を解明する糸口となると考えられる.今回得られた結果は臨床での再灌流不整脈発生の治療と予防に役立つばかりでなく,臓器移植時等の再灌流障害防止にも役立つと考えられる.
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