研究概要 |
検討内容はラットを対象とした尿道閉塞と虚血膀胱の病態モデルにおける膀胱機能と膀胱組織内神経成長因子(以下膀胱NGFと略す)の経時的変動についてである。 1)尿道閉塞:8週齢のWistar系ラットを閉塞前群(n=21)持続閉塞群(n=41),閉塞解除群(n=39)の3実験群に分けた。閉塞解除群では1週目閉塞解除群と6週目閉塞解除群を設定した。尿道の持続閉塞により最大膀胱収縮圧は一時的に低下したが,1週目で閉塞前のレベルに回復し,6,12週目で明らかな増加をみた。膀胱収縮頻度は閉塞後6,12週目で低下した。膀胱NGFは閉塞1日目から上昇し,12週間にわたって著明な増加を示した。閉塞解除群では1週目と6週目の両群ともに、解除6週目には最大膀胱収縮圧,膀胱収縮頻度および膀胱NGFが閉塞前群と同じレベルに回復した。尿道閉塞を解除すると膀胱機能が正常化し,同時に膀胱NGFも閉塞前のレベルに回復したことから,膀胱機能と膀胱NGFには密接な関連があると考えられた。 2)虚血膀胱:8〜12週齢のWistar系ラットを,正常群(n=18),虚血膀胱群(n=49),sham手術群(n=26)の3群に分けた。静止時膀胱内圧は虚血直後に著明に上昇し,その後急速に下降して1週後以降は正常群との差を認めなかった。一方,最大膀胱収縮圧は虚血直後から低下して1日後に最低値となったが,4週後には正常群の水準に回復した。排尿頻度は虚血1日後にもっとも増加し,以後漸減傾向を示した。なお,虚血1日後から2週後にかけて排尿には至らない微小収縮波の頻発傾向がみられた。膀胱NGFは虚血直後から増加して1日後に正常の2.4倍に達したが,1週後以降には正常群との差をみなかった。膀胱NGFの増加とともに膀胱が過活動状態となったことから,膀胱NGFが求心性知覚神経を活性化し,膀胱機能の保持に関与するものと思われる。
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