研究概要 |
1.胎生期間質による細胞間相互作用を介した正常上皮細胞および癌細胞の分化誘導 ラット前立腺後葉に自然発生したR3327ダニング前立腺腫瘍と新生児期精嚢腺間質および胎生期泌尿生殖器洞間質を用いて、組織組み替え実験を行った。特に、今回はPercoll gradientで前立腺腫瘍の間質を取り除き癌細胞のみを使用した。この手技により前立腺腫瘍の間質の影響を取り除き、純粋な細胞間相互作用による変化を観察することができた。その結果として、癌細胞は組織学的形態・増殖率・分泌蛋白・アンドロゲン代謝において、著しく正常前立腺上皮細胞の特徴に近づいた。本研究の結果は、将来、全く新しい癌の分化誘導療法の可能性を提示した。 ラットの後側葉の上皮細胞と胎生期泌尿生殖器洞間質、新生児期精嚢腺間質および新生児期球尿道腺間質との組織組み替え実験を行った。その結果によると、新生児期球尿道腺間質は組織組み替え前の上皮細胞と全く異なる分泌蛋白の発現を誘導することが判明した。間質によるInstructive inductionは、上皮細胞のstem cellに細胞間相互作用を介し働き、組織形態のみならず分泌機能をも変化させる。この結果は、あらためて正常上皮細胞の機能の発現に間質が重要な役割を担っていること認識させた。 2.アンドロゲン依存性における前立腺々内異質性 微小解剖法を用いることにより、ラット前立腺は形態的機能的に5葉に分類できることを報告してきた(Hayashi N, et al., Biol Reprod, 45, 1991)。今回、アンドロゲン依存性においても5葉が異なる反応を示すことを、Medical castrationとして臨床で用いられている薬剤を中心に明かにした。この実験結果から、前立腺癌の発生部位はアンドロゲン依存癌と非依存癌の場合には、異なる可能性を推測させた。
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