研究概要 |
周波数7.5MHzの探触子を用いて経腹的超音波断層法による膀胱壁厚測定をもとに、膀胱重量測定という簡便かつ無侵襲の新しい膀胱機能検査法を開発した。まず実験的検討として、剖検で得られた成人男子10例(25〜90歳、平均67歳)の膀胱を用いて膀胱壁厚の超音波計測を施行した。膀胱が球体に近似されるものと仮定し、超音波による膀胱壁厚測定をもとに算出した膀胱重量と、実際に計測した膀胱の重量との間で比較を行ったところ両者の間に有意な相関が認められた。 実験的検討の結果をもとに、膀胱内容量により変化しないパラ-メータである膀胱重量の臨床的検査法を確立した。次に実際に50歳以上の男子104例(50〜89歳,平均69歳)に膀胱重量測定を施行した。その結果、下部尿路閉塞が認められる症例の膀胱重量は下部尿路が認められない症例や正常コントロールのそれと比較し有意に大きい値を示した。さらに前立腺肥大症5例の術後の経過において膀胱重量の低下が認められた。 またpressure flow studyが施行された、AUA symptom indexが8点以上の男子症例65例(45〜89歳,平均71歳)を別に集計し検討した。その結果、膀胱重量のカットオフ値を35gとした場合下部尿路閉塞の有無についての診断的中率は86.2%であった。また膀胱重量は、下部尿路閉塞の程度をあらわすとされるAbrams-Griffiths number,urethral resistance factor,Schafer gradeなどのパラメータとの間に有意な相関が認められた。 以上により、膀胱重量は下部尿路閉塞に伴う排尿筋の代償性変化を定量的にあらわし、下部尿路閉塞の存在診断およびその程度の診断、前立腺肥大症の治療効果のモニタリングに有用と考えられた。
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