研究概要 |
ヒト糞便が蓚酸分解活性を有すること、および特発性の尿路結石患者のあるものでは正常対照者に比してその糞便の蓚酸分解活性が低いことが分かった(Int J Urol, in press)。また、われわれの分離した蓚酸分解菌であるEubacterium lentum WYH-1は人工腸液中に添加した蓚酸、および紅茶中に含まれる蓚酸を分解出来ることを明らかにした(Int J Urol, in press)。これらのことより、原因不明の腎結石患者の一部において糞便中の蓚酸分解活性が低下し、このために食事中の蓚酸の分解が不十分となり、蓚酸の吸収が亢進して結石形成が起こる可能性があることが考えられよう。 蓚酸分解菌の数を直接測定するための特殊の培地を作ることが出来たので、今後、これを使って尿路結石患者および対照人の糞便中の蓚酸分解菌を比較したい。 尿路結石患者において、脂肪摂取量が多いと尿中への蓚酸排泄量が増加することが証明出来た(Br J Urol, 76, 692, 1995)。このメカニズムは腸内での蓚酸の吸収と関連するものと思われるが、蓚酸分解菌が関与している可能性も否定出来ない。このメカニズムについての検討を始めた。 蓚酸分解酵素群の分離・精製は培養した菌体より各種クロマトグラフィー、電気泳動などにより行っている。この菌の蓚酸分解は4つの酵素、すなわち、oxaly-CoA decarboxylase, formly-CoA transferase, succinyl-CoA transferase, succinate : CoA ligaseにより行なわれていることが判明した。現在、これらの酵素の精製を進めている。
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