研究概要 |
前立腺の発育増殖局所調節機構は、内分泌因子である男性ホルモンによって発育増殖の方向にスイッチが入る。研究期間中は前立腺形態と男性ホルモン内分泌環境の変化に局所調節機構がどのように関連しているか、以下の局所因子の指標について検討した。 1.前立腺上皮機能(前立腺特異抗原:PSA):男性ホルモンブロック療法により血中PSAは低下するが、このとき前立腺でのPSA染色性の低下がみられ、これは肥大症組織でも癌組織でも同様であった。 2.増殖関連因子(c-elb-2,ki-67):ki-67抗原の前立腺での染色性も同様に男性ホルモンブロック療法より低下するが、男性ホルモンブロック療法抵抗癌分化度の低い癌では低下しないことが観察された。c-erb-2については一定した傾向を見いだせなかった。 3.アポトーシス(intranuclear DNA fragmentation)とアポトーシス抑制因子(bcl-2):intranuclear DNA fragmentationは前立腺腺房上皮細胞に局在がみられ、bcl-2は前立腺導管上皮と基底細胞に局在がみられた。肥大症組織でも癌組織でも、intranuclear DNA fragmentationの出現は男性ホルモンブロック療法施行例で多くみられ、bcl-2の出現と相反する傾向がみられた。ラットにおける実験では、去勢後3日目にintranuclear DNA fragmentationの出現は最高となり、以後漸減した。bcl-2はアポトーシスより遅れて出現し漸増した。 今後はさらに、TGF-βに代表される抑制的に増殖をコントロールする因子についても検討を拡げ、前立腺組織構築との関係より詳細に検討していきたい。
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