研究概要 |
精巣上体管内腔液のイオン組成は細胞外液と大きく異なり、また精巣上体頭部と尾部で変化するが、その機序は明らかにされてない。本研究では、ナトリウムポンプ(Na,K-ATPase)に注目し、ラットまたはヒト精巣上体における存在と局在、およびホルモン環境の変化に伴うポンプの分布の変化を検討した。 対象は、精巣摘除術にて得られたヒト精巣上体と、12週令S.D.ラットの精巣上体で、免疫組織化学的にNa.K-ATPaseの局在を検討した。その結果、ヒトおよびラット精巣上体のいずれの部位においても、主細胞の基底側および側膜側に認められた。 さらに、chemical castrationによるラット精巣上体管上皮の変化、およびそれに伴うNa,K-ATPaseの分布局在の変化、発現について、免疫組織学的に検討するとともに、ウエスタンブロッティング法によりNa,K-ATPase発現量の検討も行なった。その結果、chemical castration群とcontrol群との間にNa,K-ATPaseの反応の強さおよび局在に差は認められなかった。ウエスタンブロッティング法によるタンパクあたりのNa,K-ATPase発現量の検討では、chemical castration群の頭部でna,K-ATPase発現量の低下がみられ、光顕レベルでは確認できないNa,K-ATPaseの低下が示唆された。 本研究の結果、精巣上体上皮においてNa,K-ATPaseが割合豊富に認められることから、精巣上体管内腔におけるイオン環境は、主にNa,K-ATPaseにより形成されていると考えられること、輸出管を含めた頭部におけるNa,K-ATPaseの発現が選択的にアンドロゲンの影響を受けている可能性が示された。
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