研究課題/領域番号 |
07671774
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小林 浩 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (40178330)
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研究分担者 |
西口 富三 浜松医科大学, 医学部, 助手 (30198452)
寺尾 俊彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60022852)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1997年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1996年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1995年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 卵巣癌 / 浸潤 / 転移 |
研究概要 |
我々は、過去10年に渡る基礎研究の結果、ヒト尿中に生理的転移抑制物質が存在することを発見し、精製、同定することに成功した。この物質は妊婦の羊水および胎児尿に豊富に含まれており、遺伝子解析の結果、分子量40000の糖蛋白質であった。この物質はトリプシン活性を中和する作用があるため尿由来のトリプシン抑制物質、Urinary trypsin inhibitor(UTI)と命名した。現在この物質は国際的にビクニン(bikunin)と命名されるようになった。それはこの物質の構造に基づいた命名法であり、Kunitz型の蛋白分解酵素抑制基を2つ(bis)持つためにbis-Kunitz-type protease inhibitorよりbikuninと命名された。UTIの転移抑制作用については、現在までに卵巣癌、大腸癌と肺癌に対してin vitroおよびin vivoの実験系で検討してきたが良好な転移抑制効果が認められた。さらに最近のマウスを用いた追加実験により、卵巣癌、大腸癌、肺癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、メラノーマの培養細胞を同所移植法、皮下移植法、および静注法により行い、UTIの転移抑制作用を確認した。 最近我々はこのUTIの転移抑制作用を増強させる方法としてdrug delivery systemを開発した。つまり、UTIを癌細胞に特異的に集積させるため、癌細胞膜に特異的に発現しているウロキナーゼレセプター(uPAR)を利用することを考えた。uPARに結合するのはウロキナーゼ(uPA)であるがuPAの分子全体は必要ではなくuPARに結合する部位としてアミノ酸末端(amino-teminal fragment,ATF)の配列が必要であり、uPAとしての酵素活性は必要ない。一方、UTIの転移抑制部位を詳細に検討したところカルボキシ末端の配列(HI-8)のみ必要であることが判明したので、このATFとHI-8を結合させた蛋白質ATFHI-8を化学結合により作成した。この方法ではATFHI-8共有結合物質の収量は低いものの、UTIやHI-8単独よりも数倍強力な転移抑制作用を示した。しかし、この方法では大量生産が不可能であるため、大腸菌を用いた遺伝子工学的な手法によりこのキメラ蛋白質の大量生産を可能にした。このキメラ蛋白質ATFHI-8を用いて卵巣癌等の移植実験を行った結果、UTI単独に比べて約1/10の投与量でUTIに匹敵する効果を認めている。UTIおよびそのキメラ蛋白質ATFHI-8の安全性、毒性等の比較試験を行ったがマウスを使用する限りいずれも重篤な副作用は認めていない。 現在、世界中で癌の転移抑制剤が注目されるようになり、外国ではMatrix metalloproteinase inhibitorやanglogenesis inhibitorが臨床応用目指してphase studyが進行中である。このようなタイムリ-な時期に我々の転移抑制剤を評価可能な状態に持っていくためにも倫理委員会の承認を得て実用化に向けてphase studyを組んでいきたいと考えている。
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