研究概要 |
cisplatin(CDDP)耐性卵巣癌におけるDNA topoisomerase(Topo)の質的・量的変化と,p53蛋白機能を介した抗癌剤のapoptosis誘導能との関連を明らかにし,apoptosis誘導を介したCDDP耐性卵巣癌治療に関する基礎的知見を得ることを目的とした. 1.CDDP耐性細胞株とその親細胞株を用いたin vitroの実験から以下の知見を得た. 1)CDDP耐性細胞株におけるTopoI活性の増強とTopoII_α蛋白発現増強を認めた.また,CDDPとTopoI阻害剤SN-38あるいはTopoII阻害剤VP-16の併用は,CDDP耐性細胞株において,親細胞株におけるよりも相乗的に作用することが明らかとなった.2)CDDP,SN-38,VP-16負荷によるapoptosis進行過程において,TopoI蛋白発現量は耐性細胞株とその親細胞株の両者で変化に乏しいのに対して,CDDP負荷時のTopoII_α蛋白発現量は経時的に変化し,耐性細胞での持続的高値がみられたことから,耐性細胞におけるapoptosisとTopoII_αの関与が強く示唆された.また,耐性細胞株におけるapoptosis進行過程においてp53蛋白誘導はCDDP,SN-38負荷時にはみられず,VP-16負荷時にのみ認められた. 2.化学療法(CAP療法)前後の倹体の採取が可能であった上皮性卵巣癌症例および再発癌症例の検討成績から以下の知見を得た.1)CAP療法無効例では有効例に比して,p53遺伝子異常の頻度が高いこと,無効例でのみ化学療法後に新たなp53遺伝子異常とp53蛋白発現の増強が認められた.2)有効例に比較して,無効例で腫瘍内GSH濃度とGST-_π蛋白発現の増強が認められ,臨床検体における耐性癌の細胞内解毒機能の関与が明らかとなった.3)CAP療法後の再発症例に対する二次化学療法としてTopoII阻害剤VP-16とCDDP併用療法の感受性予測にGSH濃度とGST-_π蛋白の検索が有用であることが明らかとなった. 以上の成績から,CDDP耐性とapoptosis誘導シグナル伝達系の関連,特にp53非依存性伝達系との関連の検索によりCDDP耐性の新たな分子標的が見出される可能性があること,CDDP耐性の多様な耐性機構を症例ごとに同定することにより抗癌剤耐性卵巣癌症例の治療に結びつくことが示唆された.
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