研究概要 |
1.45,XY,t(14;21)(q10;q10)の核型のRobertson型転座保因男性精子18566個および対照男性精子27702個についてfluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて染色体14番、21番、3番、9番、17番、18番の異常率を検討した。保因男性では(21 21/14),(21/14 14),(21/-),(-/14)の不均衡型精子の頻度は2.3%,3.3%,2.6%,3.4%で対照より有意に高頻度であったが理論値の16.7%より低頻度であった。均衡型の精子は88.3%と対照男性より低頻度であった。また、3番、9番、17番、18番のdisomy精子の頻度は対照男性との間に有意差を認めなかった。以上より14q21q Robertson型転座男性の精子形成時の成熟分裂における分離が不均等に起こっているあるいは均等に分離した後淘汰が起きていると考えられた。 2.46,XY,t(3;9)(q26.2;q32)の核型の転座保因男性精子20038個および対照男性精子20182個についてFISH法を用いて染色体3番、9番の精子染色体構成および染色体18,X,Yの異常率を検討した。保因男性では交互分離、不均衡型分離(隣接1型分離、隣接2型分離、3:1型分離)で形成された精子の比率は、それぞれ52.5%、47.27%(33.7%、5.44%、5.93%)であり、一方、対照男性では交互分離の精子が98.7%、不均衡型分離の精子が1.1%であった。また、保因男性での18番,XX,XY,YYdisomy精子の頻度は対照男性との間に有意差を認めなかった。以上より、均衡型転座t(3;9)(q26.2:q32)の保因男性における精子の約半数が隣接1型分離、隣接2型分離、3:1型分離で形成された不均衡型の染色体構成を持つことが明らかになり、均衡型転座例にみられる高率の流産はこれらの精子が受精した結果、生じたものであることが示された。
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