研究概要 |
arbitrarily primed(AP)-PCR法はPCR初期cycleのannealing温度のstringencyを低くし,PCR primerを目的DNAにrandom annelingさせる方法で,annealing band patternがladder状に現れる一種のfingerprinting法であり,polymorphismの解析に用いられる。われわれはAP-PCR法を多病巣を持つ婦人科癌のclonality解析に応用し,転移特異遺伝子変異の同定を試みた。腹腔内散布病変を持つ卵巣癌8例とリンパ節などに転移巣を持つ子宮内膜癌5症例,および卵巣癌,子宮内膜癌合併の8症例について複数病変の腫瘍DNAと正常DNAを抽出し,20個のrandomに選んだprimerを用いてAP-PCRを施行した。20個のprimerのうち10個は明瞭なDNA bandが現れたためAP-PCR解析が可能であった。一度のtrialで平均20本のbandが得られたので約200箇所の領域のDNA解析を行うことができた。AP-PCRにsingle strand confor mation polymorphism解析を応用したが,AP-PCRをしのぐ結果は得られなかった。AP-PCR解析の結果,すべての症例において正常DNAと腫瘍DNAにおいて最低1箇所以上で変異を認めた。同一患者の複数病変の腫瘍DNAの間で異なるDNA bandが認められたのは子宮内膜癌と卵巣癌同時発生の一症例のみであった。この症例においてDNA bandは3箇所において異なっていた。この症例は臨床病理学的に異なるclonalityを持つと思われた症例であり,その結果と一致した。その他の20症例の複数のDNA bandはすへて同一であったため,同一腫瘍が進展した可能性が考えられた。今回のわれわれの診断では転移特異遺伝子変異領域は同定できなかったものの,AP-PCR解析は転移性腫瘍の解析に有用な検査であると考えられた。今後,転移性腫瘍症例およびPCR primerの数を増やすことにより転移特異遺伝子領域の同定が可能であることが示唆された。
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