研究概要 |
単核球活性因子を加えたマウス腹腔(Mφ)ならびにこれらの培養上清によるマウス初期胚(in vivo embryo,in vitro fertilized embryo)の共培養 (1)ICRマウス♀(8W)の腹腔内に生理食塩水,recombinant human M-CSF(rhM-CSF)を投与しRPMI1640培地5mlにて洗浄して腹腔Mφを回収した。1.0×10^6/mlに濃度調節して4 well dishに移し、37℃,5%CO2,in airの条件下で1時間培養付着させ、上清を捨てこれに0.3%BSAを含んだHTFを加え、過排卵処理して交配して得たマウスin vivo前核期胚と共培養し、37℃,5%CO2,in airの条件下で胚発育に及ぼす影響を検討した。 さらに、Mφ培養上清のみでも同様の検討を行った。Mφ共培養によって胚発育が促進されたが、予めrhM-CSFを投与して回収した腹腔Mφとの共培養ではこれを有意に上回る胚発育率が認められた。インターセルを使った非接触の腹腔Mφの培養上清のみの培養でも、control群と比べていずれも胚発育が促進された。 (2)腹腔Mφの培養上清中のサイトカイン濃度とサイトカインの胚発育に及ぼす影響を検討し以下の結果を得た。1.IL-1β,IL-6,GM-CSF,IFN-γが検出されたが、rhM-CSFを投与して回収した場合、有意に高い濃度を示した。2.共培養上清中と同じ濃度でサイトカインを添加した時の胚盤胞率はcontrol群と差はみられなかった。 (3)腹腔Mφを0.3%BSA加HTFで24時間前培養後Mφと培養上清に分け、Mφを凍結後融解後0.3%BSA加HTFを加え、培養上清は56℃45分、熱処理を加えた。各々に前核期胚を37℃,5%CO2,in airの条件下で各群における胚盤胞率を比較した。1.凍結融解処理したMφによる共培養では胚発育促進効果はみられなかった。2.熱処理を加えた培養上清では共培養と同等の胚発育促進効果は有意に抑制された。 以上より、腹腔Mφとの共培養による胚発育の促進効果は、熱に不安定な可溶性因子の関与が示唆された。
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